最優秀賞
風が降る
山下 奈美
風ばかりつよい町
白い胴衣の背に
十文字の藍を滲ませて
わたしは竹刀をかかえたまま
呆然と
無秩序な真冬の流れを見ていた
空の光りかたさえ
まるで金属じみている
尖った陽ざしとあいまって
北西から吹きおろすこの風は
潮も砂も乱れ飛ばしながら
中田島の砂丘に
今日も
複雑怪奇な風紋を描いたのか
稽古あがりの汗が飛べば
枯草と
防具の藍染めが香る
光の粒を西へ掃きよせて
空の水色が翳ったら家路につこう
辛辣な向かい風を割って
あのころ あの空は
風も時間も頭上から降らせてきた
刹那的に
居丈高に
さあ どうだ
ひと太刀で斬ってみせろと