公開日 2009年06月01日
更新日 2015年02月20日
太田玉茗賞
サケのふるさと
羽生北小学校四年 肥後 侑樹
学校からもらってきた五つのサケの卵。
ビンの中キラキラとオレンジ色にかがやいていた。
お正月の少し前、元気な赤ちゃんが生まれた。
目玉がクリクリして、クルクルよく泳ぐ。
赤城おろしの吹く 寒い寒い日、利根川の東武鉄橋の元に放流した。
ビンを川の上でかたむけた時、
「バイバイ。元気でね。」と、ぼくは言った。
空になったビンは、とても軽くなった。
さみしいけれど、ほんの少しの間のお別れ。
これからずっとおおきくなって、
元気に海まで泳いでいくんだよ。
高速道路の橋をくぐって、
国道の橋をくぐって
いくつもの鉄橋の下を通り
広い広い海に旅立つ、ぼくの五匹のサケ。
大きな魚に食べられちゃダメだよ。
どんなことがあっても、
生きて生きて生きぬくんだ。
絶対に、生きて、大人になって、ここに帰って来るんだよ。
そして、五年後の田んぼが金色になる秋、
いくつもの鉄橋の下を通り、
国道の橋をくぐって、
高速道路の橋をくぐって、
この東武鉄橋の元に帰っておいで。
約束だよ。
必ずまた会おう。
この、ぼくたちのふるさとで。
中学生になった ぼくが待ってる。